「最低賃金改定」と給与体系

  今年も10月1日から20日にかけて最低賃金が
改定され、2016年度の最低賃金額
(全国加重平均額)は時給823円となりました。
最低賃金は2007年以降、右肩上がりで増額
し続けています。 特に今年は、政府による
「ニッポン一億総活躍プラン」「経済財政運営と
改革の基本方針2016」「日本再興戦略2016」
などもあり、過去最高額の引き上げ(プラス25円)
となりました。
政府は「2020年に最低賃金を全国平均で1,000円」
という目標を掲げています。この目標の実現性は
不明ですが、少なくとも来年以降も引続き
最低賃金は増額されるものと見てよいでしょう。
最低賃金の引上げは、収入増による消費活性化
を期待しての政策ですが、言うまでもなく企業に
とっては人的コスト増による収益悪化という
マイナス面もあります。
10月中旬に帝国データバンクが発表した
「最低賃金改定に関する企業の意識調査」によると、
有効回答企業1万292社のうち、35.0%の企業が
「給与体系を見直した」または「見直しを検討して
いる」と回答しています。
実に3社に1社が、「給与体系見直し」すなわち
増額しているという結果です。
業種別に見ると、「小売」が48.9%と最も多く、
「運輸・倉庫」43.4%、「製造」41.0%と続きます。
パート・アルバイトの雇用割合が高い業種ほど
給与体系が見直されているようです。
また、給与体系見直しの理由として、複数の
企業が「人材確保」を挙げています。
慢性的な人手不足のなか、同業他社に人材が
流れないよう賃金を増額する企業が増えて
いるのです。
最低賃金を下回ると、最低賃金法により
使用者は罰金刑に処せられますが、最低賃金
の金額さえ支払えばよいかというと、
そうでもありません。
すでに多くの企業が最低賃金に合わせて
賃金を増額しており、賃金相場は年々上昇
しています。従来のままの給与体系では
相対的に低賃金の企業となり、人材確保が
難しくなるかもしれないからです。
給与体系見直しは、人件費増加につながる
ほか、従業員の合意形成も必要なことです
から、資金的・時間的に余裕がある時機に
行うことが肝心です。
貴社でもご検討されては如何でしょうか?

(2016年11月30日)