「求人」が職安で不受理に

今年5月、東京地裁において、定年後に1年ごとの
契約で嘱託社員として再雇用された複数の
労働者(トラックドライバー)の職務内容が定年前
と変わらないにも拘わらず、会社(長澤運輸)が
賃金を約3割引き下げたこと(正社員との賃金格差)
は労働契約法第20条の趣旨に反しており違法との
判決がありました。
賃金格差について同条(期間の定めがある
ことによる不合理な労働条件の禁止)の違反を
認めた判決は過去に例がなく、「通常の労働者と
定年後再雇用された労働者との不合理な格差
是正に大きな影響を与える画期的な判決である」
との評価もあり、人事労務担当者にとっては
大きなインパクトのある判決として受け止められ
ました。
その後、会社側が控訴していましたが、11月2日に
その判決が東京高裁でありました。
① 控訴審における判断
控訴審判決において、裁判長は「定年後再雇用
での賃金減額は一般的であり、社会的にも容認
されている」とし、賃金の引下げは違法だとして
差額の支払い等を命じた東京地裁判決を取消し、
労働者側の訴えを棄却しました。
労働者側の弁護士は、「減額が一般的であると
しても通常は職務内容や責任が変わっており、
社会的に容認とする根拠は何もない」として、
上告する方針を示しています。
② 賃金の設定には慎重な判断が必要
最高裁まで進む可能性があるため、司法に
おける最終的な判断がどのように確定する
のかは不明ですが、「控訴審の判断が妥当」
と見る向きが多いようです。
然し、この事件が定年後再雇用者の処遇に
ついてのこれまでの常識(当然のように賃金の
引下げを行うこと)について一石を投じたこと
には間違いはなく、最終的な結論がどちらに
転んだとしても、今後、会社としては「定年後
再雇用者の処遇」については慎重な判断が
求められると言えるでしょう。

(2016年11月30日)