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減給処分後の賞与の減額

2018/5/31 (木)

当社社員が昨年2月に社内規定に反する不祥事を
起こしたので、減給の懲戒処分を科しました。
その後,昨年7月に賞与を支給しましたが,賞与の
算定期間が昨年1月から6月まででしたので,
2月に不祥事を起こしたことを考慮して低位査定を
行い,他の社員よりも少ない賞与を社員Aに
支給しました。
然し先般、社員Aから「2月に減給処分を受けた
のに更に賞与が減額されることは二重処分であり,
無効である。本来支給される賞与と支給された
賞与との差額を支払え」との苦情がありました。
このような場合,差額の賞与を支払わなければ
ならないのでしょうか。
①減給の制裁
減給とは,「労務遂行上の懈怠や職場規律違反
に対する制裁として,本来ならばその労働者が
現実になした労務提供に対応して受けるべき
賃金額から一定額を差し引くこと」を言います。
従って,減給の制裁の前提として,労働者が
使用者に対して賃金請求権を有していることが
前提となります。
この減給の制裁については労基法91条で
「就業規則で,労働者に対して減給の制裁を
定める場合においては,その減給は,1回の額が
平均賃金の1日分の半額を超え,総額が
一賃金支払期における賃金の総額の10分の1
を超えてはならない」と定められています。

②二重処分(一事不再理)となるのか
 同一事由について2回の懲戒処分を行うことは
禁止され,このことを「一事不再理」ないし
「二重処分の禁止」と言います。
このことは裁判例でも,例えば「懲戒処分は,
使用者が労働者のした企業秩序違反行為に
対してする一種の制裁罰であるから,
一事不再理の法理は就業規則の懲戒条項にも
該当し,過去にある懲戒処分の対象となった
行為について重ねて懲戒することはできないし,
過去に懲戒処分の対象となった行為について
反省の態度が見受けられないことだけを理由
として懲戒することもできない」
(平和自動車交通事件・東京地決平成10年
2月6日)と判示されているところです。
 それでは,過去に懲戒処分を受けた者に
ついて賞与を低位査定することは二重処分
として禁止されることになるのでしょうか。 
これについては、社内規程の定めにより
結論が異なります。
(イ)社内規程の根拠条項で「賞与を支給する
ことがある」、「賞与は会社の経営状況,
本人の勤務状況等を勘案し,支給することが
ある」といった定めの場合には,使用者により
過去の勤務状況を踏まえて決定された支給額,
その限度においてのみ賞与支払請求権が
発生すると考えられますので,そもそも減給
の制裁に該当するものではないと考えられます。
従って,差額を支払う必要はありません。
(ロ)他方,「賞与は2カ月分の基本給を支払う」
と定められていた場合には,労働者に基本給の
2カ月分の賞与支払請求権が発生している
のであり,減給処分を受けていたことを理由
として減額をすることは二重処分に該当しうる
ものと考えられ,申し出通り差額の支払いが
必要となるものと考えられます。

(2018年5月31日)