管理職の労働時間の把握義務

来年4月から、いわゆる「管理職」の労働時間
把握と、その記録の保存が企業に義務づけ
られると報道されました(日経新聞7月31日付)。
現状でも、企業はタイムカードやパソコンなど
「客観的な方法」により労働者の労働時間を記録し、
3年間分保存しなければなりません(厚生労働省
「労働時間の適正な把握のために使用者が
講ずべき措置に関する基準」)。
この範囲に、新たに管理職も含まれるとの
ことです(取締役ら経営陣は対象外)。
労働基準法上「管理監督者」は、労働時間や
休日の規定の対象外とされています(但し、
深夜割増賃金の支給や年次有給休暇の付与は
必要)。
管理監督者は、経営に参画する立場として、
自らの労働時間に一定の裁量があるためです。
そのため、現状では管理監督者の労働時間の
把握や保存の義務はありません。
そのため、現状では管理監督者の労働時間
管理はなおざりにされている場合が少なく
ないようです。
一方、今回の新たに課せられる労働時間
把握義務は、労働安全衛生法(安衛法)上の
「面接指導」を目的とする趣旨です。
安衛法は、管理職を含むすべての労働者の
健康管理等を目的としています。
該当条文は次の通りです。
「事業者は、(略)面接指導を実施するため、
厚生労働省令で定める方法により、
労働者(略)の労働時間の状況を把握
しなければならない。」(改正第66条の8の3)。
条文等で明らかでない詳細については、
今後の政省令等を待つことになりますが、
さしあたり企業の実務上、現在一般社員が
行っている出退勤記録と同じことを、管理職
にも徹底させる必要が出て来そうです。
昨年は、大手電力会社の課長職の
過労自殺や、ドーナツのフランチャイズ店
の店長(「名ばかり管理職」と批判
されました)の過労自殺など、管理職の
過重労働に関する報道も少なからず
ありました。
今後は一般従業員だけでなく、管理職の
過重労働にも従来以上の注意が必要に
なると思われます。

(2018年8月25日)