高齢労働者の労働災害防止

政府は「70歳まで働く機会の確保」に向けた議論を開始し、
希望すればすべての人が70歳まで働けるように、企業に高齢者
の雇用機会を作るよう努力義務を課す方針を示しました。
来年の通常国会に「高年齢者雇用安定法」の改正案を提出する
予定だそうです。
また、「成長戦略実行計画」でも高齢者が能力を発揮し、安心して
活躍するための環境を整備するためのガイドラインの策定等が
検討されています。
他方で、雇用者に占める60歳以上の割合が17.2%(2018年)に
達する中、高年齢労働者の労働災害が増加しています。
今後、高年齢労働者は、否が応でも増えることになりますが、
現状でも死傷災害(休業4日以上)となった人の4人に1人が
60歳以上の高年齢労働者です(厚生労働省「労働者死傷病報告」)。
年齢を重ねるとどうしても体力は低下しますが、特に、握力は
全身の筋力を把握するための指標と考えることもできるそうです。
高齢者の認知症発症リスクは、身体活動レベルが低いほど
上昇する傾向があるといわれています。
しかし、65歳以下の中高年層でも、握力が強い人は、脳卒中等の
発症リスクが低かったり、認知症になりにくかったりし、更に握力
が強い人はストレスに強く、セルフコントロール能力が高いとの
研究もあるそうです。
握力は、部分的に鍛えるだけでは向上しにくく、脚・腰など全身の
筋力向上と相関関係があり、握力向上≒全身の筋力向上とも
いえるそうです(そういえば、アマゾンで折り畳み傘を買ったら
オマケに握力強化用の「ゴム製の輪っか」がついていました。
キッと傘を開け閉めするために、握力を鍛錬した方がよいとの
親切心だったのでしょう)。
高齢労働者の労災(特に転倒・腰痛等)の発生率の高さが
注目されていますが、今後高齢労働者の増加とともに
労働災害を起こしにくい体作り(握力強化等)のための指導まで
会社に求められるかもしれません。

(2019年10月30日)