自己都合退職も労使トラブルになる?

最近は、自己都合退職が労使トラブルになっていると聞きましたが、どういうことなのでしょうか?
退職の意思を会社に伝えようとする従業員に対し、会社が 退職を認めないという「自己都合退職トラブル」が増加して います。 「上司が面談に応じない」「退職届を受理しない」「離職票 さえ渡さない」「有給休暇を取得させない」「辞めた場合は 損害賠償請求すると脅迫する」などがその代表例です。 昨年度、都道府県労働局及び労働基準監督署に寄せられた 民事上の個別労働紛争相談の内、「自己都合退職」は2番目 に多い38,954件でした。 この件数は直近10年間で見ても増え続けており、平成27年度 を境に「解雇」を上回っています(厚生労働省「平成29年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」)。 かつての不況下においては解雇トラブルがよくみられましたが、 人手不足の昨今は自己都合退職トラブルが多くなり、この傾向 はしばらく続くと思われています。 労働者は法律上、期間の定めのない雇用の場合、いつでも 雇用の解約の申入れをすることができます。 また、会社の承認がなくても、原則として解約の申入れの日から 2週間を経過したとき、雇用契約は終了します。 就業規則の「退職」の項目においては、業務の引継ぎ等の 必要性から、「退職希望日の少なくとも1カ月前に退職届を 提出」等と規定することも多いですが、この規定のみを理由に 退職を認めないということはできません。 一度退職を決意しその意思を表明している従業員に対し、 慰留・引留めを行ってもさほど効果は無いものですし、 度を過ぎれば前述のような法的案件にもなりかねません。 従って、感情的な対応はせず、淡々と引継ぎや退職手続を させた方が良いようです。 最近では民間企業(退職代行ビジネス)が本人に代わって 退職手続を行うサービスを利用して、会社との自己都合退 職トラブルを防ごうとする退職者も増えています。 この場合は、本人と面と向かうことなく、会話もないまま退職が 完了してしまいます。従業員が自己都合退職に至る動機 はさまざまですが、そもそも「辞めたい」と思わせない会社づくり が基本であることはいうまでもありません。
(2018年10月31日)