副業・兼業ガイドライン

企業に広く兼業・副業を認めるよう促すために、現行法令のもとで
どういう事項に留意すべきかを纏めた「副業・兼業の促進に関する
ガイドライン」が、9月に改定されました。
企業も労働者も安心して副業・兼業を行うことができるように、
ルールを明確にすることを目的としています。
今回の改定では、労働時間の通算管理や、安全配慮義務、
秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務等についての記述
が新設されています。
なかでも注目されるのが、労働時間の通算管理に関する
事項です。
長時間労働や健康被害を防ぐために、企業は、労働者から
の自己申告により副業で働いた時間を把握し、本業と副業の
労働時間を通算して労務管理を行うとしています。
また労働時間管理については、簡便な労働時間管理の方法
として「企業負担に配慮した管理モデル」が示されています。
本「管理モデル」では、副業・兼業の開始前に、当該副業・兼業
を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者A
の事業場における法定外労働時間と、後から労働契約を
締結した使用者Bの事業場における労働時間(所定労働時間
及び所定外労働時間)とを合計した時間数が、単月100時間未満、
複数月平均80時間以内となる範囲内において、各使用者の事業場
における労働時間の上限を夫々設定し、各使用者が夫々その範囲内
で労働させるものとしています。
また、使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働
について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、
夫々自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金
を支払うこととします。
これにより、夫々の使用者は、副業・兼業の開始後においては、夫々
予め設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の使用者の
事業場における実労働時間の把握を要することなく労基法を遵守する
ことが可能になるとしています。然し乍ら、本「管理モデル」では労働者の
自己申告がベースとなっていますので、実態の労働時間把握には問題が
残ります。
結果的に長時間労働となってしまうのではないかと指摘する向き
もあるのです。

(2020年9月25日)