賞与の支給額算定方式

 私どもは、日頃中堅企業の人事・給与制度の改訂、設計コンサルティングを行っていますが、多くの企業で、賞与の支給額算定方式は未だ基本給連動型と呼ばれる方法を採用しています。

要は「基本給の○ヶ月分」という方式です。この計算方式を採用している企業には、私達は先ず「どうして基本給と連動させているのですか」と尋ねます。みなさんはこの計算方式を疑問には思いませんか?会社業績による成果を社員に配分する意味がある賞与を、なぜ基本給と連動して決めなければならないのでしょうか?

最近でこそ成果主義人事制度の浸透や定昇廃止の動きにより状況が変わりつつありますが、なんだかんだ言ってもわが国の基本給制度はまだまだ年功的に運用されていることが多いのです。春になると、なんとはなしに毎年昇給を積み上げてきた結果、多くの企業で、”伸び盛りの状況にある若手課長よりも、ベテランの主任の方が、基本給が高い”ということが、起きています。最近は”それではいけない”として、基本給の見直しを進める企業も増えていますが、まだまだ完全にこの逆転が解消されたとは言い難い状況にあります。

 このように本来的な貢献度の高さが反映されていない基本給に、一定の支給月数を乗じて賞与を計算すれば、基本給の逆転が成果配分である賞与にまで影響してしまうことになります。具体的には、以下のようなことが発生するわけですが、このような状況は会社を良くするでしょうか?

若手優秀課長:250,000×2ヶ月=500,000円

ベテラン主任:350,000×2ヶ月=700,000円

もし私がこの若手課長であったとしたら、会社に対する幻滅を抑えることは難しいでしょう。これは、つまり人事管理において一番避けなければならない”やってもやらないでも結果は同じ”、”頑張った者負け”の状況を作ってしまうのです。上記の例は、文字通り「頑張った者負け」の状態に陥っています。

 会社の次の時代を創る若手優秀層のモティベーションを下げたくないのであれば、このような賞与計算方式は改善し、本来あるべき状態を取り戻すことが重要ではないでしょうか。”多くの賞与を支給すれば社員は頑張るだろう”というような馬ニンジン方式の考え方には問題がありますが、かといって差がなさ過ぎる、もしくは逆転しているという状況は、”バカらしいから頑張るのは止め、ほどほどにしておこう”という社員の後向きな行動を誘発することにもなりかねません。

「会社への貢献度に一定の差があるのであれば、賞与にも適切な差を設けること」。

これが賞与制度を考える際の基本的な発想です。だから、制度設計を行なう際には、まず「当社における貢献度の差とは何か、報いてやるべき成果とは何か」ということをしっかり考えることが重要です。これは各社様々かと思いますが、社内資格等級(グレード)、役職、人事評価結果、部門業績など、賞与算定のキーとなる貢献度の要素があるはずです。

これが見つかったら、賞与配分のルールを作成します。賞与は成果配分ですから、まずは配分可能原資を設定し、それをこの様々なタイプの貢献度に応じて、各社員に配分していくのです。例えば、役職と個人評価に基づいて配分するのであれば、その2要素によるマトリックスを作成して、賞与支給額を決定してはいかがでしょうか?これをもう少し体系的にまとめた方法がポイント制賞与制度ですが、基本的な発想は今回ご紹介したようなところにあります。基本給という呪縛に囚われず、賞与はもっと社員のモラール向上に効果的に決定・支給したいものです。

なお、私どもでは、ポイント制賞与制度の設計は、種々手がけておりノウハウも蓄積しております。ご興味があれば、ご相談下さい。 (06/02)