成果主義賃金訴訟で社員逆転敗訴

(イ)「成果主義賃金訴訟」の概要
年功序列賃金から成果主義賃金への変更は無効だとして、変更により減少した賃金の支払いなどを求めて社員3人が会社を訴えていた訴訟で、東京高裁は、賃金制度の変更は高度の必要性に基づく合理的なものであると認めてその効力を肯定し、制度の変更を無効と認定して約300万円の支払いを命じた第1審の判決を取り消しました。

(ロ)不利益変更となる制度の変更 社員3人は、制度変更に伴って基本給が 7万5,000円~3万8,000円減少し、役職も降格されました。会社は、年齢給と職能給とで構成する基本給のうち、年功序列で運用していた職能給を廃止し、業績目標の達成度などにより格付けする、職務等級に基づく職務給を支給する制度に変更するとともに、評価次第で昇格も降格もあり得る制度に変更しました。年齢給も30歳以降は定年まで同額とし、ある等級以上の者には支給しないとする変更を行いました。また、制度変更に伴い、2年間に限り従前賃金との差額を支給する経過措置を講じていました。

(ハ)「高度の必要性に基づく」合理的内容 判決では、制度の変更は賃金減少の可能性がある点で不利益変更に当たるとした上で、経過措置が2年間に限り賃金減額分の一部を補てんするにとどまるものであって、些か性急で柔軟性に欠ける嫌いがないとは云えない点を考慮しても、なお、上記の不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであると言わざるを得ないと述べ、制度変更は経営上の必要性に見合うとして相当であると認めました。

(ニ)制度変更が合理的と認めた判断理由 今回の判決の判断理由として、以下のことが挙げられています。
①主力商品の競争が激化する中で労働生産性を高め、競争力を強化する必要性があった。
②賃金原資総額を減少させるものではなく、 賃金原資の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするもの    である。
③どの社員にも自己研鑽による職務遂行能力等の向上により昇格・昇給することができる平等な機会を保障    している。
④人事評価制度も最低限度必要とされる程度の合理性を肯定しうるものである。
⑤あらかじめ社員に変更内容の概要を通知し周知に努め、労働組合との団体交渉を通じて労使間の合意によ    り円滑に賃金制度の変更を行おうと努めた。
⑥それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が採られた。 なお、社員側は上告する方針だそうです。    
 (06/08)