「確定拠出年金」の運用放棄

新聞報道などによると、確定拠出年金(日本版401k)制度で資金を運用しながら
転職などで手続きをし忘れ、「運用放棄」とみなされている人が2006年度で約8万人
いるそうです。

国民年金基金連合会の調べで判明したもので、前年度より7割程度増えています。
公的年金の記録漏れが問題となる中で、制度の運営がうまくいかない「もう1つの年金問題」
ともいえそうです。

確定拠出年金は、加入者本人や企業が毎月一定額を拠出し、積み立てたお金を
投資信託や債権などで運用する仕組みです。加入者が年金資金の運用先を
自己責任で選べるようにするとともに、企業側の運用負担を軽減することなどが目的で、
欧米などでは普及が進んでいます。

運用放棄者の資産の合計は約211億円(2006年度末)で、前年度より6割程度
増えています。日本で加入している人は3月末で約230万人。
この中には運用放棄者は含まれていません。

加入者に対して支払う年金額を企業が約束する「確定給付年金」は、原則として、
転職すると清算する必要がありますが、確定拠出年金は一定の手続きをすれば
転職先にそれまでの運用成果を持ち運ぶことができます。

転職した際に手続きを忘れる人が多いのは、持ち運べる制度であることを理解して
いない人が多いことの現れのようです。

転職後半年以内に手続きをしないと運用放棄とみなされ、それまで運用してきた成果
である積立金は国民年金基金連合会の管下に移ります。
手続きを忘れ、積立金が国民年金基金連合会に移っても、受給権は失われません。

ただ、保管中は積立金を寝かせた状態となるため、運用益は得られません。
さらに手数料が月50円引かれるため、その分は元本が目減りし続けることとなります。
雇用の流動化が進み、異なる年金制度間を行き来する人も増えています。

確定拠出年金はそれを見越して2001年に導入された制度ですが、細かい制度の中身
が根付いておらず、手続き漏れが生じやすい状態になっています。

確定拠出年金の置き忘れを減らすため、厚生労働省は、転職者が自動的に年金を
移せるような専用ファンドをつくるなど、新たな制度の検討を始めました。

ただ、自己責任で「運用する確定拠出年金の原則に反する」という指摘もあり、
具体的なスケジュールは見えていません。