移行が遅れる適格退職年金

平成24年3月に適格退職年金の移行期限が終了しますが、
先日、社団法人生命保険協会から、「企業年金の受託概況」
という資料が発表され、平成20年3月末現在の適格退職年金の
契約がまだ32,825件残っていることが明らかになりました。

平成20年3月末現在の適格退職年金の状況は以下のように
なっています。
①受託件数:32,825件(前年比△6,060件)
②加入者数:442万人(前年比△64万人)
③資産残高:117,433億円(前年比△38,820億円)

資産残高を見ると大幅に減少しているように見えますが、
これは適年制度の解約や資産移換が進んだというよりも、
サブプライムローン問題により運用環境が悪化したことの影響が
大きく(企業年金全体の資産残高は対前年比11.3%のマイナス)、
単年度の受託件数の減少幅は、確定給付企業年金が施行された
平成14年度以降で最低の水準となっています。

このように適年廃止問題への対応は予想以上に遅れており、
今後の混乱が懸念されています。
このような情勢に対処し、適格年金からの移行を促進するため
厚生労働省は、次のような対策を矢継ぎ早に打ち出しています。

「①税制適格年金を採用している中小企業が他の企業年金に移行
するのを促進するため、厚生労働省内に支援本部を設立し、
平成21年1月10日に初会合を開いた。
②企業型確定拠出年金における掛金拠出を、従業員に解禁することを
決定した。企業が拠出した掛金に従業員が上乗せする仕組みで、
従業員分の掛金は全額所得から控除される。また、拠出限度額も
引き上げる。同省では、本通常国会での関連法案成立、来年度中
の実施を目指している。
③厚生労働省は、確定給付型と確定拠出型の双方の要素を持つ
「混合型」のメニューを増やし、企業年金の給付設計を拡充する検討
に入った。」

これらの対策は、税制適格年金からの円滑な移行を目指すためと
されており、今後の動向が注目されます。