「労災認定基準」の見直し

厚生労働省は、仕事を原因とするうつ病などの精神疾患や過労自殺の
労災認定基準について、10年ぶりに見直しを行いました。
ストレス強度の評価項目を増やし、今年度から新基準での認定を始めます。

精神障害に関する労災は、厚生労働省が1999年に作成した心理的負荷評価表
に基づき、労働基準監督署が発病前6カ月間について、職場で起きた出来事の
ストレスの強さを3段階で評価し、判定します。
「病気やケガ」「仕事内容の変更」「セクハラ」などの具体的な出来事の有無を
判断材料として、総合判定で「弱、中、強」の3段階に分類し、強の場合、
労災に当たるとしています。

認定基準の見直し後は、会社の合併や成果主義の採用、効率化など、
働く環境の変化を念頭に入れ、ストレスの要因となる職場の出来事として
「多額の損失を出した」「ひどい嫌がらせやいじめ、暴行を受けた」
「非正規社員であることを理由に差別や不利益扱いを受けた」など、
新たな判断基準として評価項目を31項目から43項目とし、
12項目を新たに追加しました。

今回の労災認定基準の見直しにより、それぞれの職場に沿った
労災認定ができるようになることが期待されています。
しかし、時代の変化により多様化・複雑化した労働者の精神疾患について、
認定基準が細かくなり、職場の現状に見合った労災認定に近付けることは、
労災補償の対象となるような病気になってしまった労働者にとっては
喜ばしいことである反面、逆に、今後はさらにうつ病や過労自殺の労災認定件数
が増えていくように思われます。

職場に沿った労災認定基準の見直しの動きや労災認定者に手厚い補償を
することも大事ですが、労働者がうつ病や過労自殺に追い込まれないような
労働環境の整備や労働条件の改善、そのような状況にならないための予防策を
打ち出すことが、政府として一番取り組むべき課題とも云えるでしょう。