社員15年寿命説

 現在400万人を超え、さらに急激に増加するフリーターに関する番組が、先日放映されていました。正社員の生涯賃金が約2億5,000万円に対し、フリーターのそれは約6,000万円に過ぎないといいます。今後益々、正社員とフリーターに階層分化していくことが予想されています。
 フリーターになると能力開発の機会もなく、一定年齢になると正社員になることは不可能に近くなります。低賃金のフリーターは、社会保険料を納めることも困難で、家族を扶養することもできない状態です。 この番組では、”フリーターは雇用が確保されず、単純作業を低賃金で行うと位置付けられ、一方の正社員は、雇用が確保され、かつ高賃金である”と位置付けていました。
 ところが現実には、終身雇用制は崩壊しています。正社員も、必ずしも生涯、雇用が確保されているとはいえません。”正社員とは比較的長期間雇用が確保されている”と言ったが正しいでしょう。更に、正社員においても”2割の幹部候補生と8割のその他一兵卒”とに早期選抜を行なう動きが現れています。「社員は平等に成長するというのは共同幻想であり、個人能力の成長は精々15年である。能力の止まったその他大勢組に年功給を上げる必要はない。」
 ある雑誌では、これを社員15年寿命説と呼んでいます。そこでは、大量に採用した平成バブル入社組が標的になっていましたが、他方で、団塊の世代(現在 57歳〜54歳)が定年を迎えた後も、もはや企業の人事制度は年功序列型には戻らないと予測されています。15年で成長が止まるのが事実であれば、これまでの賃金理論の中核となっていた職能給が機能しなくなります。バブル崩壊時までの大量生産・大量消費時代までは、すべてが右肩上がりでした。問題を先送りして、皆仲良くその果実を享受することが、効率的でした。然し、その前提が崩れた今、能力や人間そのものの選別が始まりました。一億総中流といわれたのは、ほんの少し前のことでした。本当に厳しい時代に突入したものだと痛感する今日この頃です。
(2004年4月)