退職金への生命保険の利用

適格年金から他制度への移行検討時などに生命保険を活用する
企業も多いのですが、生命保険を活用すると次のようなメリット
が考えられます。
1.社内積立手段
退職金積立手段として,実際に多くの企業で生命保険が活用され
ており,適格年金からの移行の際にも,「中退共+生命保険」,
「401k+生命保険」といった形で活用されています。
企業にとってのその最大のメリットは,あくまで社内積立手段
であることです。
中退共や401kでは,企業が拠出した掛金は完全に企業から離れて
しまいますので,企業に掛金が戻ることは原則ありませんが,
生命保険は契約者である企業が保険金や解約返戻金を受け取ること
ができます(ただし保険の種類にもよります)。例えば,一般的に
退職金は自己都合退職の場合には減額されることになるため,
中退共や401kで定年退職金をフルカバーするように掛金を
拠出していくと,自己都合退職時に退職金規程上の定めより
多額な退職金が従業員に渡ってしまうという不都合が生じます。
ですから,中退共や401kで積み立てる額はあくまで自己都合退職金
の水準をカバーするものに留めなくてはなりません。
少なくとも定年退職金と自己都合退職金との差額の部分は,
生命保険を活用する余地があるといえます。
また,あくまでも社内積立ですので,決して好ましいことではない
かもしれませんが,どうしても他の事業資金として活用したいとき
にも,解約するなり契約者貸付を受けるなりして退職金以外の目的
に転用することができることになります。
2.自由設計が可能
適格年金のように退職金規程とセットというわけではありませんので,
加入金額等は自由に設定することができることもメリットの1つです。
生命保険の種類によっては,従業員全員を加入させなくてもよい
ケースもありますので,使い勝手はさらによいでしょう(もちろん,
生命保険ですから健康状態によっては加入したくとも加入できない
ケースもあり得ます)。
3.保障機能がついている
さらに,あくまで生命保険ですから保障機能があります。万が一の
ときには,死亡退職金や死亡弔慰金のファンドとしても極めて有効
です(死亡保険金が,会社にではなく遺族に支払われてしまうケース
もあります)。
4.損金算入可能
ご承知の通り,退職給与引当金制度が廃止になっています。
そのような中で,生命保険の種類によっては,掛金の全部または
一部の損金算入が認められています。利益の繰り延べ効果も
考えられます。
5.その他
その他にも生命保険の種類によっての特性がいろいろとあります
ので,専門家の十分な説明を受けてから選択されることを
お勧めします。

(2011年8月25日)