労働保険の強制加入の強化

厚生労働省は2005年度から、労働保険(雇用保険と労災保険の総称)に加入していない事業所を強制的に加入させる「職権適用」の強化を決めました。 労働保険は、パート、アルバイトを含む労働者を1人でも雇っていれば、その事業主は加入手続きを行い、労働保険料を納付しなければならないことになっています。 保険料の負担は、労災保険料が全額事業主負担で、雇用保険料は、ほぼ労使折半での負担ですが、コスト負担を嫌うことや事業主の認識不足から、労働保険の加入手続きをしていない中小・零細企業が少なくないという現状があります。

  ◆事業主が労働保険の加入手続きを怠っていた場合

 事業主が労働保険の加入手続きを怠っていた場合であっても、社員が失業や事故にあった際には一定の給付を受けることが可能です。 ただし、故意または重大な過失により加入を怠っていた事業主に対しては、2年間さかのぼった保険料の徴収に加え、罰則として10%の追徴や労災保険給付に要した実際の費用の一部を請求されることになります。

  ◆未加入事業所の洗い出し

 厚生労働省では、現在約2,000人が労働保険の加入促進や徴収業務にあたっていますが、新たに100人の非常勤職員を各地の労働局に配置して、未加入事業所の洗い出しを強化する方針です。 新たに配置される100人には、制度に詳しい社会保険労務士などを「適用指導員」として採用し、地域の業界団体などと協力して未加入事業所の把握や加入指導にあたることになります。
 ◆それでも加入を拒み続けた場合

 度重なる指導や立入検査にもかかわらず、加入を拒み続けた場合には、従業員20人以上の事業所を中心に「職権適用」を発動し、職権で加入手続きをさせて保険料を徴収する方針です。 さらに、2005年10月からは労災保険の未加入に対する事実上の罰則も強化されます。加入指導に応じない悪質な事業所で労災事故が発生した場合には、現状では労災保険給付額の4割を徴収していますが、これを全額負担に改めるということです。 例えば、死亡事故の場合の遺族補償一時金は、賃金の1000日分が支給されますが、この全額負担となると、賃金が10,000円の労働者の場合で1,000万円を負担することになってしまうのです。

 ※ この「職権適用」の流れは労働保険だけでなく、厚生年金保険の未加入問題についても検討されています。社員にとって老後の生活がかかっている年金問題だけに、より厳しい処置が予想されます。
(2005年4月)