賞与支払時の在籍要件

当社は、就業規則に、賞与支給日に在籍している者に限り賞与を支払う旨の規定があります。6月10日が本来の夏期賞与(支給対象期間:前年10月~当年3月)支給日でしたが、労使交渉難航のため賞与の支払が1ヶ月程度遅れました。その場合、6月10日(本来の支給日)の後に退職し、実際の支給日に在籍しない者にも賞与を支給する必要があるでしょうか?
これは、結論から言いますと、支払遅延の結果、実際の支給日には在籍していなくても本来の支給日に在籍していれば支払う必要があります。その理由は、以下の通りです。
先ずはじめに、賞与の支給対象期間の全部又は一部を勤務していながら、支給日には在籍していない者について賞与を支給しないとの取り扱いが実務上問題になることがあります。就業規則等において”賞与は支給日に在籍している者に支給する”あるいは”支給日に在籍していない者には賞与は支給しない”との規定(一般に「支給日在籍要件」と言います。)を置く企業が多く、このような規定は、初期の裁判例では否定された例も見られましたが、今日では支給日在籍要件を予め規定している場合には、そのような規定は有効とする見解が確立しています。
又、就業規則等に定めがなくても、支給日在籍要件が確立した労使慣行となっている場合も同様に有効とされています。ただ、無用なトラブルを避けるためにも支給日在籍要件を明確に規定しておくことをお勧めします。尚、これらは自己都合退職者に言えることです。 “退職の時期を自由に決めることができない” 定年退職や整理解雇などの会社都合退職者の場合は、”勤務期間に応じた賞与を支給する必要”がありますので、注意が必要です。この例のように、賞与の支払が遅延した場合、例え「支給日在籍要件」を規定していたとしても、実際の支給日に在籍していた者のみに支給することは、本来の支給日に在籍していた者から賞与を受給する権利を一方的に奪うことになりますので許されず、実際の支給日までに退職していても本来の支給日に在籍していた者であれば支給する必要があります。その遅延理由が、労使交渉が難航したことにであっても同様です。 (2004年7月)