老齢厚生年金の支給繰下げ制度

老齢厚生年金の支給繰下げ制度が新設されたと聞きましたが、その概要を教えて下さい。
厚生労働省は、65歳以降の厚生年金の受給開始時期を最も遅い場合で70歳まで延長できる制度を2007年4月から導入します。1ヶ月遅らせると毎月の年金額が約0.7%増え、最大で42%増えることとなります。この繰下げ制度を利用できるのは、厚生年金の受給権があり、2007年4月1日以降に65歳となる人です。そして、本制度は”高齢者の就労を促すこと”を目的に導入されるものと思われます。それは、受給を繰下げても平均余命まで生存し、年金を受取れば、生涯の受給額が、繰下げを行わず65歳から年金を受取り始めた場合と同額になるように毎月の年金額が設定されるからです。
然し乍ら他方、65歳から69歳までは、給与・賞与(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の合計額が48万円を超えると老齢厚生年金の48万円を超える部分の2分の1を減額する所謂「在職老齢年金」制度が適用されます。その為、この繰下げ制度を利用し、老齢厚生年金の受給を遅らせた人だけ”減額されない年金”を受取ることになり、働きながら”65歳から、減額された年金(在職老齢年金)”を受取る人との間に不公平が生じます。このことは、現在就労し、保険料を払い続けている人にとって、就労意欲を失わせることにもなりかねません。
そのため、この制度が実際に導入される前までに、一定以上の収入のある65歳以上の会社員がこの繰下げ制度を利用して受給を遅らせる場合には、何らかの特別ルールを適用し、この様な不公平が生じないように本制度の変更がなされる可能性が高いと思われます。 (2004年7月)