フレックス制社員にも出張命令できる?

当社はフレックスタイム制を採用していますが,フレックスタイム制の適用社員に対しても出張命令を出すことはできるのでしょうか?
フレックスタイム制とは,労働者が,1カ月などの単位期間 の中で一定時間数(所定時間)労働することを条件として, 自己の選択するときに労働を開始し,かつ終了できる制度 のことをいいます。 そして,通常は,全員が必ず勤務しなければならない 時間帯(コアタイム)と,その時間内であればいつ出退勤しても いい時間帯(フレキシブルタイム)が定められていますが, コアタイムやフレキシブルタイムを設けることは労基法には 規定されておらず,これらを設けるか否かは,労使の協定で 自由に定められることになっています。 但し,フレキシブルタイムが極端に短く,始業・終業時刻の 決定について従業員の裁量が認められているとはいえない ような場合には,フレックスタイム制の趣旨に合致しないものと されている点には注意する必要があります。 他方、出張とは,労働者が常時勤務している場所とは異なる 場所で,使用者の指揮命令の下に予め定められた一定の 業務に従事することをいい,使用者は労働者に対し, 業務命令権の一環として,出張を命ずることができると 考えられています。 このことは,フレックスタイム制の下であっても同様であり, 使用者は,同制度の適用対象者に対しても,「出張」業務を 命じることは許されると解されています。 問題なのは,フレックスタイム制の下では,使用者は,労働者 に対し,始業・終業時刻を指定して勤務を命ずることは許され ないことから,時間を指定した出張が許されるかどうかという 点です。 かかる時間を指定した出張は,フレックスタイム制と相容れないため, 時間を指定することとなる出張を命ずることは許されないと考えられ, かかる場合には,労働者の同意が必要であると解されています。 このように,フレックスタイム制適用者に対する具体的な日時を指 定した出張については,当該労働者の同意を要するとなると, 顧客との関係で問題が生ずることも考えられます。 しかし,通常はフレックスタイム制が適用される当該労働者において, 自主的に顧客と時間等を調整して出張業務を遂行する場合が殆どで あると思われますので,実務上はあまり問題が生ずることはない のかもしれません。
(2019年8月24日)