「マタハラ」の判断基準

厚生労働省は、マタハラに関する最高裁判決 (2014年10月23日)を踏まえた解釈通達(2015年1月23日) に関して、3月30日に「妊娠・出産 ・育児休業等を契機とする 不利益取扱いに係るQ&A」を公表しました。 このQ&Aには3つの項目があり、妊娠・出産・育休等の 事由を「契機として」不利益的取扱いがなされた場合は 違法になるとし、この「契機」について焦点をあてています。 ◆広島中央保健生活協同組合事件 この事件は、妊娠中の理学療法士が軽易な業務への転換を 希望したところ、人事異動により降格とされ、育児休業後も 元の役職に戻されなかったため、これが妊娠を理由とした 不利益取扱いであり、男女雇用機会均等法に違反するとして 勤務先の病院に対して管理職手当の支払いおよび損害賠償 を求めた事案で、2014年10月23日に最高裁が病院側勝訴を 判じていた広島高裁に差戻しを命じたものです。 この判決を受け、厚生労働省はいわゆる「マタハラ」を防止 するため、今年1月23日に全国の労働局に通達(妊娠・出産、 育児休業等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達) を発出し、企業に対する指導を厳格化するよう指示しました。 Q&Aでは、原則として、妊娠・出産・育休等の終了から 1年以内に不利益取扱いがなされた場合は「違法」と判断 するとしています。 なお、1年を超えていても、人事異動、人事考課、雇止めに ついて、事由の終了(妊娠・出産・育休等の終了)後の最初 のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合も 違法となります。 不利益取扱いに当たらない例としては、例えば、 ①会社の業績悪化によりどうしても不利益取扱いを しなければならず、不利益取扱いの回避のための合理的 な努力がなされた場合、 ②本人の能力不足等について事由の発生前から問題点 を指摘・指導していた場合等が挙げられています。 また、有利な影響が不利な影響の内容を上回り、一般的な 労働者が合意するような合理的理由が客観的に存在する 場合も例外と判断される可能性があります(労働者の同意 や事業主の説明が必要)。 いずれにせよ、具体的な判断基準が示されたことで、 事業主は今後さらに注意して対応する必要があるでしょう。 (2015年4月28日)