前払い退職金に関する社会保険料の取り扱いは?

当社は、従来退職金制度を持っていましたが、経営環境が厳しい折から、退職金資金を積み立てていくのは かなり厳しくなりました。そこで、社員と協議の結果、退職金制度を前払い退職金制度に衣替えして、月々の収入を増やすこととしました。 この制度変更による社会保険料の取扱いはどうなるのでしょうか ?
厚生労働省から、前払い退職金に関する社会保険料の取り扱い通達が 平成14年10月1日付けで発表されています。この通達の内容は、 次のようになっています。 「被保険者の在職時に、退職金相当額の全部または一部を給与や賞与に 上乗せして前払いをする場合は、労働の対償としての性格が明確であり、 被保険者の通常の生計にあてられる経常的な収入である。このことから、 原則として健康保険法に定める報酬または賞与に該当するものであること。」  そもそも前払い退職金とは、退職時に支払われる退職金相当額の全部または 一部を、在職時に前倒しして給与や賞与に上乗せして支払うものです。 ご存知のとおり、社会保険料は給与および賞与に関して徴収され、退職時に 退職を事由として支払われる退職金には徴収されません。 両者の違いは社会保険における「報酬」に該当するか否かであり、給与および 賞与は報酬に該当しますが、上記事由による退職金は該当しないので、 社会保険料が徴収されないのです。 上記通達がなぜ発表されたのかといえば、前払い退職金という概念が 社会保険では想定されていなかったため、企業によって前払い退職金を報酬と みるか否かで社会保険料徴収の取り扱いがまちまちだったからです 。つまり、給与や賞与に上乗せして支払う前払い退職金相当額を、報酬とみて 社会保険料を徴収する企業がある半面、退職金の一部なので報酬とせずに 社会保険料を徴収しない企業があったのです。  前払い退職金の具体的な取り扱いですが、毎月の給与で退職金相当額を 上乗せして支払っている場合には、その分が報酬として含まれることになります。 ですから、今回の退職金制度を前払い制度に変更すれば、従来、その前払い分が 報酬に含まれることになり、場合によっては月額変更届を提出する可能性が でてくるため注意をしてください。