有期雇用社員の初回更新時の更新拒絶は合法?

当社に契約期間を1年とする契約社員がおり,まもなく最初の期間満了を迎えますので、契約を更新をしない予定ですが、問題はないでしょうか?
有期労働契約の更新拒絶(いわゆる「雇止め」)については,裁判上 その効力が否定される事案が少なくありません。有効・無効の判断の基準は 確立されていないものの,多くの裁判例では,当該契約社員の業務の内容 (恒常的なものか臨時的なものか)や労働条件(正社員と同等か),継続 雇用を期待させるような使用者の言動の有無等に加え,更新の回数が 重視されています。  これは,判例法理により,労働者が期間満了後の雇用の継続を期待する ことに合理性がある場合には,解雇権濫用の法理を類推適用すべきである とされており,契約が反復更新されていることは,このような期待の合理性 を裏付ける大きな要素とされているからです。  ただし,初回の契約期間満了時に更新を拒絶した事案でも,雇止めの効力 が否定された例がわずかながら存在します。 龍神タクシー事件(大阪高判平成3.1.16)では,当該会社において,それまで 10年以上にわたり更新が拒絶された例がなかったことや,更新手続が杜撰で あったことなどが重視され,結論として,「(労働者において)雇用を 継続するものと期待することに合理性を肯認することができる」 とされました。したがって,初回の更新拒絶であるからといって,必ずしも 雇止めが認められるわけではなく,その他の事情(他の契約社員に対する 従前の扱いや更新手続の厳格さ等)も慎重に吟味する必要があります。 もっとも,契約更新時の紛争を防止する趣旨で,平成15年に 「有期労働契約の締結,更新及び雇止めに関する基準」 (同年厚生労働省告示357号)が定められましたので、実務上,雇止めに 関するルールが確立されています。同基準によれば,使用者は,契約 締結時において,契約社員等に対し,契約更新の有無を明示するとともに, 「更新する場合がある」とするのであれば,その判断の基準をも 明示しなければならないことになっています(第1条1項,2項)。 このルールに従い,契約締結時に「更新しない」としていればもちろん, 「更新する場合がある」としたうえで,更新の有無の判断基準を明確に 定めておけば,理屈のうえでは「期間満了後に雇用が継続されるとの 期待に合理性がある」と判断されるリスクを極小化すると考える事が できます。逆に言えば,上記基準によらずに更新の有無やその条件を 明示していないと,いざというときに雇止めが無効とされてしまう リスクが生じます。このように,契約期間満了時の紛争を避けるためには, 何より契約締結時に労働条件通知書等でしっかりとした取決めをしておく ことが肝要です。なお,上記基準においては,有期労働契約が3回以上 更新されていたり,契約社員が1年を超えて継続雇用されていたりする場合 には,雇止めの30日前までにその予告をすることとされています(第2条)。