社員の健康管理はどのようにするの?

近年、企業においては社員の健康管理およびそのリスク対策が重要な労務管理上の論点となっています。特に入社間もない社員に精神面での不安が感じられた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
社員を雇い入れた際には、労働安全衛生法および 同法施行規則に基づき、指定の項目について医師 による健康診断を行わなければならないと義務 付けられています。然し、既往歴・自覚症状等を 記入する欄はあるものの、本人の申告はなかなか 為されず、又、そもそも本人が自覚等をして いなければ、特に精神的な部分については分かり にくいのが実際のところでしょう。 然し、使用者は社員の健康管理に関する配慮義務を 負っていますので、この義務を果たすために、労働者 の健康情報を把握し、必要な対応を取ることが 求められています。最近は、特に安全配慮義務が 過労死や過労自殺に関する裁判で取り上げられ ており、社会的に強く求められる傾向になっています ので、労働者の健康状態に不安を感じたときは 放置しておくことができません。 健康管理のための受診命令に関してリーディング ケースとなった最高裁判決(電電公社帯広事件)では、 「要管理者(労働者)がその健康回復のために従う べきものとされている健康管理従事者(会社の健康 管理担当者)による指示の具体的内容については 、指示できる事項を特に限定的に考える必要はなく、 例えば、精密検診を行なう病院ないし担当医師の 指定、その検診実施の時期等についても指示する ことができるものというべきである。」とされています。 この判決から分るように、健康状態に問題があると 危惧される場合は、業務上必要な範囲において 使用者は労働者の健康状態についての情報を 得るための受診を指示することが許されます。 電電公社帯広事件では、就業規則等への定めは 存しなくても受診を指示できるとされていますが、 受診を「業務命令」の一環として命じるためには、 健康診断受診命令権を就業規則に明確に規定 しておくことが望ましいでしょう。 更に、日頃から部下の行動を観察し、おかしな 症状や行動がみられたときには、きちんと文書で 記録を残しておき、また、受診命令を所属の管理職 一人で判断するのではなく、会社の人事担当責任者 や健康管理担当責任者と相談することが望まれます。 それでもなお判断に迷う場合は、産業医へ具体的な 状況を正確に報告し、相談することも一つの工夫 だと思います。 2018年11月29日)