当日朝の有休申出は有効?

当社では、年次有給休暇の取得にあたっては、社内の取扱いとして取得日の前日の終業時刻までに申出ることになっていますが、先般ある社員から当日の朝に年休の申出があり、急遽休まれてしまいました。当日の朝に年休の請求があった際にも、会社は応じなければならないのでしょうか?
年休は労働基準法第39条に定めがあり、8割の出勤率など一定の 要件を満たすと勤続年数に応じて所定の日数が付与されることに なっています。 年休の付与単位については、基本的には1日単位で与えることに なっています。そしてこの1日とは、暦日で計算されることに なっているため、午前0時から24時までの24時間がその単位と なります。 つまり、始業時刻から年休が始まるのではなく、その日の午前0時 から休暇が始まっているのです。 一方、年休の取得にあたっては、労働者に対して時季指定権が 与えられており、会社としてもできる限り請求のとおりに年休が 取得できるようにすることが求められています。 しかし、請求された時季に年休を与えると事業の正常な運営を 妨げる場合については、会社に時季変更権が認められています。 但し、この時季変更権についてはかなり限定的な解釈がなされており、 代替要員の確保や人員配置の変更など行った上でなお、年休を 取得させては事業の遂行に大きな支障があるといった場合に限り 認められるものとされています。 それでは始業時刻前に会社に連絡があり、その当日に年休を取りたいと 申請があった場合、会社は認める必要があるか否かについて どうでしょうか。 上記のとおり、年休は午前0時から24時間を単位として与えること になっており、当日の朝になって年休の申請をするということは、 既にその労働日が始まっていることになります。 また、会社には年休の時季変更権が認められていますが、 当日の朝に申請された場合は、時季変更権を行使することが 実際に不可能という状況にあります。 この時季変更権の行使については、参考となる判例があり、 「労働者の年次有給休暇の請求(時季指定)が使用者に時間的余裕 を与えずになされた場合、使用者の時季変更権の行使が、 休暇期間を開始し、または経過した後になされたとしても、 そのためにこれを違法とすることはできない(要するに、 時期変更権の行使が実態的に無理な状況の場合は、労働者 が休暇をとっている最中またはその後に、使用者が時期変更権 を行使するとしてもやむを得ないとの意」」としています。
以上のことから考えると、当日の朝の年休申請について、
会社はその申請を認めず、欠勤扱いにすることは問題ない
(その日は欠勤とし、有給は別の日とする)と考えることが
できます。
しかし、実態として当日の申請を認めている場合については、
会社が勝手に当日の申請を認めず欠勤扱いにするとトラブルを
招くことになってしまいます。
また、当日の朝に体調が悪くなり休むこともあるため、
これらの場合については年休の取得を認めるか否かについて、
予め検討しておく必要があるでしょう。
会社としては、従業員に対して年休を取得する場合はなるべく
時間的な余裕をもって申請して欲しいことを伝え、十分に
社内アナウンスしておくことが望まれます。

)2011年10月28日)