業績悪化による内定取消はOK?

内定後の景気悪化等を理由として、学生の内定を取消すことはどの程度可能なのでしょうか?
企業・大学・学生いずれにとっても非常に深刻な問題である 内定取消は、どのような場合に認められるのでしょうか。 裁判所の考えは、内定取消は、一般的に「客観的にみて 内定を取り消してもやむを得ない事情がある場合」にのみ 許され、単なる業績悪化だけを理由として簡単に認められ るものではないとしています。 裁判例(大日本印刷事件:最判昭和54年7月20日)では、 会社が応募者に「採用内定通知」を発して、応募者が これに応じる旨の「誓約書」を提出した場合には、 入社日を「採用内定通知」に記載された時期とし、 「誓約書」に記載された採用内定取消事由が発生 したときは当該契約を解約できるとの解約権が留保 された労働契約が成立していると考えられる、と しています。 さらにこの留保解約権については、内定の当時知る ことができず、また知ることが期待できないような 事実であって、これを理由として採用内定を取り消す ことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当 として是認することができるものに限られる、としています。 ◆「整理解雇の4要件」との関係 また、経営悪化を理由とする採用内定取消の場合 について、いわゆる「整理解雇の4要件」の考え方に 沿った判断を下した事例がありあます (インフォミックス事件:東京地決平9年10月31日)。 この事案では、(1)人員削減の必要性、(2)採用内定取消 の回避の努力、(3)人選の合理性は認められるが、 (4)手続きの面において十分な説明が欠けていたとして、 採用内定の取消が無効と判断されています。 したがって、採用内定を取り消すべきかどうかは、 上記の4要件の考え方に沿って慎重に考えなければなりません。
(2016年2月27日)