懲罰的慰謝料とは?

先般、慰謝料請求訴訟でワタミに通常の損害金支払に加え「懲罰的慰謝料」の支払が認められたとのことですが、どういうことでしょうか?
過労死・過労自殺の損害賠償請求訴訟では、
①死亡による精神的苦痛に対する慰謝料、
②死亡しなければ得られたはずの収入を填補する
遺失利益、
③葬儀費用等が請求内容となります。
このうち、①は交通事故裁判例の蓄積によって
作成された、いわゆる裁判所基準により算出され、
②は死亡労働者の基礎収入から生活費を差し
引いた額に係数を掛け合わせて算出されます。
実際には他にも様々な事情を斟酌して算出されますが、
あくまでも死亡による損害を回復するという考え方です。
過労死についての有名な労働判例である電通事件では、
会社の支払額は約1億6,800万円(うち遅延損害金
4,200万円)でしたが、先般、裁判外で和解をした
ワタミ事件では会社は1億3,365万円を支払うことと
なりました。
いずれも高額な賠償金支払義務を負った点は
共通しますが、ワタミ事件の1億3,365万円は、
上記①で示した従来からの相場では、
2,000~2,500万円のところ懲罰的慰謝料と
合わせて4,000万円とされ、これに上記②
による7,559万円等を加えて算出されています。
この“懲罰的慰謝料”が認められた点が、
過去の事件と大きく異なると言われています。
アメリカ等では、損害賠償金の目的には損害の回復の
ほかに違法行為の抑制もあるとして、生じた損害以上の
賠償金を認めます。ファーストフード店で買ったコーヒーを
こぼして火傷を負った客への賠償金約3億円の支払いが
命じられた例もあります。
日本でも大型トレーラーの脱輪事故で1億円を懲罰的
慰謝料として請求したケース等ありますが、これまで
認められたものはありませんでした。
ワタミ事件で原告側代理人を務めた弁護士は、
「今後、同様の事件を起こした企業には、司法判断と
しても、社会的非難としても、厳しい判断が相次ぐだろう」
とコメントしています。
労働基準行政でも、違法な長時間労働の是正勧告に
従わない企業名の公表、送検といった取組みが
強化されてきております。
今後は益々コンンプライアンス重視をしない企業は、
社会から淘汰されて行くと言えるかもしれません。

(2016年4月5日)